日本の「実質賃金」が26ヶ月連続マイナスだった事実が、統計から消された方法

2023年から2025年にかけて、日本の実質賃金は歴史的な長期マイナスを記録した。しかし、政府発表の統計を注意深く読むと、この事実が巧妙に目立たなくされていることに気づく。

「基準改定」というマジック

毎月勤労統計調査は、数年ごとにサンプル企業を入れ替える「基準改定」を行う。2024年の改定では、高賃金の大企業サンプルが増加し、統計上の平均賃金が上方修正された。改定前のデータでは26ヶ月連続マイナスだった実質賃金が、改定後は「18ヶ月」に短縮。8ヶ月分のマイナスが統計的に消えた。

「名目賃金上昇」の報道トリック

メディアが「賃上げ率3.5%で過去最高」と報じるとき、それは大企業の春闘結果だ。しかし日本の雇用者の約70%は中小企業に勤務しており、中小企業の賃上げ率は大企業の約半分。さらにパート・アルバイトを含む全雇用者の平均で見ると、名目賃金上昇率は1.8%。物価上昇率3.2%を下回り、実質マイナスが続く。

消費者物価指数の「品目操作」

CPIの品目には「帰属家賃」が含まれる。これは持ち家所有者が自分に払っているとみなす架空の家賃で、実際の支出ではない。帰属家賃はほとんど変動しないため、CPIを下方に引っ張る効果がある。帰属家賃を除いたCPIは、公式発表より約0.8ポイント高い。つまり、実質賃金のマイナス幅は公式統計よりさらに大きい。

データが語る「体感」との乖離

「景気が良くなっている実感がない」という国民の声と、「経済は緩やかに回復している」という政府見解。このギャップの正体は、統計の作り方にある。数字は嘘をつかないが、数字の見せ方は嘘をつく。